アトックスによる原子力発電所の仕組みの解説

最終更新日 2024年5月3日

2020年4月時点で日本全国に59基の発電用の原子炉施設があり、このうち運用中の施設は33基です。
残りの26基については既に運用が廃止され、一部は解体作業が進められています。

運用中の施設の中で実際に発電が行われているのは、日本全国で合計6基です。
関西電力と九州電力に契約している方であれば、6基の原子炉によって作られる電気を使用していることになります。

 

石炭や天然ガスを使用する火力発電と同じ

原子力発電所ではウランなどの核燃料が核分裂をする際に発生する熱でお湯を沸かして水蒸気を発生させ、タービンを回して電気を作ります。
基本的な仕組みは石炭や天然ガスを使用する火力発電と同じですが、お湯を沸かす方法が異なります。
原子炉ではウランやプルトニウムなどの核燃料に中性子を照射させ、中性子を吸収した際に原子核が2つかそれ以上に分裂して熱を発生します。

熱と一緒に人体に極めて有害な中性子線も放射されるので、周囲の環境に漏れないようにするための防護材に覆われた状態になっています。
運転中は核燃料を覆う原子炉や遮蔽材に中性子線が照射され続けますが、中性子を吸収することで周囲にある物質も放射性物質に変化します。

核燃料が核分裂を起こすと別の元素に変化しますが、核分裂後に新たに生み出される元素の多くも強い放射線を発生する放射性物質です。

 

使用済みの燃料から生じる放射線も遮蔽することが求められる

このため、使用済みの燃料から生じる放射線も遮蔽することが求められます。
ちなみに未使用のウラン燃料(U235)から発生する放射線は弱いですが、使用済みの核燃料は新燃料と比べて1億倍以上の放射線を放出するようになります。

原子炉で使用される核燃料や遮蔽材からは非常に強い放射線が発生するので、事故などで周辺の環境に放射能が漏れると甚大な被害が生じます。

このため、原子力発電所では何重もの安全装置が備えられています。
核燃料はガラス固化された上でジルコニウム合金性の筒に収められていて燃料集合体の形で冷却水の中に入れられており、通常では内部の放射性物質が外部に漏れることはありません。

ただし運転中の核燃料の集合体からは非常に強い熱を発生しているため、常に水中で冷却し続けないと一瞬で溶けてしまうほどです。

 

非常に危険な放射性物質が取り扱われる

何らかの不具合で原子炉内の水位が低下して核燃料集合体が冷却水から露出すると、強い放射線を発生させる放射性物質が冷却水を通して他の場所を汚染してしまいます。
原子力発電所では非常に危険な放射性物質が取り扱われるため、万一の場合に備えて何重もの安全装置を備えています。

運転中に何らかのトラブルが発生した場合には、核分裂反応を停止させてから炉心の核燃料を十分に冷却する必要があります。
核反応を停止させる場合は中性子を吸収するための制御棒を挿入しますが、万一の場合に備えて多めに取り付けられています。

非常時にただちに核分裂反応を停止させたい場合には、短時間で全ての制御棒を挿入する“スクラム”と呼ばれる操作が行われます。
原子炉内は冷却水が炉心を循環しており、運転中は蒸気の形で熱エネルギーを取り出した後は水に戻して再び炉心を冷却します。

 

非常時には別系統で炉心に水を注入する装置が備えられている

何らかの理由で冷却水の循環ができなくなったり水が漏れて水位が低下した場合に備えて、非常時には別系統で炉心に水を注入する装置が備えられています。
もしも冷却水の循環が停止したり水位が低下した場合は別系統の配管から炉心に水が注入されますが、これも正常に作動しない場合は非常用炉心冷却装置(ECCS)が使用されます。

非常用炉心冷却装置を作動させると自動的に制御棒が挿入されて原子炉の運転が停止され、同時に炉心に強制的に冷却水が送られます。
さらに、原子炉全体を覆う格納容器の外からも水を噴射して全体を冷却します。

非常用炉心冷却装置は原子力発電所でトラブルが発生した際の“最後の砦”で、これが正常に機能しないと旧ソ連のチェルノブイリ原発で起こったような甚大な事故が生じます。
過去に日本国内で非常用炉心冷却装置が実際に作動したケースとして、1991年2月9日に関西電力美浜発電所2号機事故があります。

この事故では配管が破断したことが原因で炉心の冷却水の水位が低下し、炉心が露出する寸前にベテラン作業員が気づいてすぐにECCSを作動させました。
もしもECCSを作動させるタイミングが数秒だけ遅れていたら、チェルノブイリや福島と同じような大事故が福井県で起こっていました。
原子力発電所で使用される核燃料は、核分裂反応を停止した後もしばらくの間は熱を発生し続けます。

 

株式会社アトックスによるまとめ

このため、停止後もポンプで冷却水を循環させて炉心を冷却し続ける必要があります。
原子炉の停止後に冷却水の循環が止まると、水が蒸発して水位が低下して核燃料が露出して溶融してしまいます。

原子炉の停止中は電気を生み出していないので、外部がら供給される電源を使用して炉心を冷却しなければなりません。
このため、原子力発電所は非常用にバッテリーやディーゼル発電機などが設置されています。

アトックス サービス案内~環境測定~